ケース別ガイド
海外から特定技能で採用する
海外在住の外国人を特定技能で採用する場合、国内採用とは手続きの起点も所要期間も大きく異なります。企業側が手続きの主体となる場面が多く、送出機関や紹介会社との連携が必要です。
候補者がすでに確保できている場合は「スケジュール」から読み進めてください。
Prerequisites
先に社内で決めること
送出機関や紹介会社に連絡する前に、次の3点を社内で決めます。
- 1
採用人数と入社希望時期
- 何人を、いつまでに入社させたいか
- 海外採用は全体で4〜6か月以上かかるため、入社希望日から逆算して「いつ動き始めるか」を決める
- 1〜2人と10人以上では、パートナーの選び方も費用構造も変わる
- 2
分野と業務区分
- 自社の業務が特定技能の対象分野・業務区分に入っているか
- 分野によって候補者の供給国や送出機関の強みが異なる
- 対象外の業務であれば、別の在留資格を検討する必要がある
- 3
外部パートナーにどこまで任せるか
- 候補者の募集・選定は送出機関や紹介会社に
- 申請書類の作成は行政書士に
- 来日後の支援は登録支援機関に
- 初めての海外採用であれば、フルサポートで始めて2回目以降に自社比率を上げるのが現実的
ここが曖昧なまま外部に相談しても、条件がブレて二度手間になります。
Partners
外部パートナーの役割と選び方
海外採用では複数の外部パートナーと連携するのが一般的です。それぞれの役割を確認して、「誰に何を頼むか」を整理してください。
候補者の所在国で、候補者の募集・選定・送出を行う機関です。特定技能では、二国間協定の対象国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)では認定送出機関の利用が求められる場合があります。
役割
- 候補者の募集・選定
- 技能試験・日本語試験の受験支援
- 来日前の日本語教育・生活指導
- 出国手続きの支援
- 雇用契約の説明補助
選び方のポイント
- 二国間協定の対象国では、認定された送出機関を利用する。非認定の機関を使うと申請が通らないリスクがある
- 自社の分野で送出実績がある機関を選ぶ。分野によって候補者プールの質と量が大きく変わる
- 候補者への日本語教育の内容と期間を確認する。教育の質が入社後の定着に直結する
- 複数の送出機関に相見積もりを取るのが一般的
- 既に取引のある紹介会社があれば、その会社が提携する送出機関を紹介してもらう方法もある
コスト
- 送出機関への費用は企業側が負担する場合と、候補者側が負担する場合がある
- 企業側の費用は1人あたり数万円〜数十万円程度(教育期間や内容による)
- 候補者から不当な費用を徴収していないかの確認が重要。特定技能では保証金や違約金の徴収が禁止されている
注意点
- 送出機関の品質差は大きい。候補者の離職率や過去のトラブル事例を確認する
- 二国間協定は国ごとに内容が異なる。対象国によって手続きが追加される場合がある
- 送出機関は候補者の「送り出し」まで。来日後の支援は登録支援機関の役割
- 現地訪問できる場合は、教育環境や候補者の状況を直接確認することを推奨
日本側で、海外在住の候補者を紹介する会社です。送出機関との間に立って、企業と候補者のマッチングを仲介します。
役割
- 企業の採用条件に合う候補者の紹介
- 送出機関との連携・調整
- 面接の設定(オンラインまたは現地)
- 雇用条件の調整
選び方のポイント
- 特定技能の海外採用で実績のある紹介会社を選ぶ。国内紹介のみの会社では海外採用のノウハウがない場合がある
- 自社の分野・希望する国に強い紹介会社かどうかを確認する
- 紹介会社が提携する送出機関の質も間接的に影響する。提携先の情報を事前に確認する
- 紹介から入社後フォローまでの対応範囲を明確にする
コスト
- 成功報酬型が一般的。採用者の想定年収の20〜35%程度が目安
- 紹介手数料の算定基準は会社ごとに異なるため、事前に確認する
- 送出機関の費用とは別に発生する
注意点
- 紹介会社を通さず、送出機関と直接やり取りすることも可能。ただし初めての海外採用では、紹介会社を通した方がリスクを抑えやすい
- 紹介会社は紹介まで。在留資格認定証明書の申請は企業側(または行政書士)が行う
- 紹介会社と登録支援機関を兼ねている会社もあるが、役割は別物として整理する
特定技能1号の外国人に対する義務的支援(全10項目)を、受入れ企業に代わって実施する機関です。海外採用では来日前の事前ガイダンスから関わることが多いです。
役割
- 事前ガイダンスの実施
- 空港送迎の手配
- 住居確保の支援
- 生活オリエンテーション
- 定期面談の実施
- その他、義務的支援10項目の実施
選び方のポイント
- 海外採用の受入れ実績がある機関を選ぶ。国内切替のみの実績だと、来日前後の支援ノウハウが弱い場合がある
- 自社の所在地域で対応できるか確認する。来日後の支援は対面が基本
- 対応言語を確認する。候補者の母国語で支援できるかどうかが定着に影響する
- 費用体系(月額制か、支援項目ごとか)を事前に確認する
コスト
- 月額2万〜4万円/人程度が目安(機関や支援内容による)
- 初期費用(入国支援など)が別途かかる場合がある
注意点
- 登録支援機関への委託は任意。受入れ企業が自社で支援体制を構築すれば委託しなくてもよい
- ただし初めての受入れでは支援体制の基準を満たすのが難しいため、委託するケースが多い
- 支援計画の作成は在留資格認定証明書の申請時に必要。登録支援機関の選定はフェーズ1で済ませておく
在留資格認定証明書の申請書類作成と入管への提出を代行する専門家です。
役割
- 申請書類の作成
- 立証資料の整理・助言
- 入管への申請取次
- 不備指摘への対応
選び方のポイント
- 特定技能の申請で取次実績がある行政書士を選ぶ。在留資格の種類ごとに必要書類や審査ポイントが異なる
- 自社の分野で実績があるかを確認する
- 紹介会社や登録支援機関から紹介を受けることも多い
コスト
- 1件あたり10万〜20万円程度が目安(認定証明書の申請)
- 複数人の同時申請で単価が下がる場合がある
注意点
- 自社で書類作成と申請を行うことも可能。ただし不備による不交付リスクを考えると、初回は行政書士に依頼する方が安全
- 行政書士は書類の作成と申請まで。支援計画の実施は登録支援機関の役割
Selection
候補者の選定と面接
海外在住の候補者は直接会えない場合が多いため、確認手段と判断基準が国内採用とは異なります。
候補者情報の確認
試験合格状況
特定技能評価試験と日本語試験の合格を確認する。未合格の場合は受験予定と合格見込みを確認する
職歴・技能
対象分野での実務経験の有無。技能実習の修了者であれば試験免除の可能性がある
日本語力
試験の合格区分だけでなく、実際の会話力を面接で確認する
来日意向と時期
候補者がいつ来日できるか、家族の状況などを確認する
面接方法
- オンライン面接が一般的。送出機関が面接の場(通信環境、通訳手配)を設定してくれることが多い
- 現地に渡航して対面面接を行う企業もある。複数名を同時に選考する場合は現地面接の方が効率的な場合がある
- 面接時は日本語での簡単な質疑応答を含めると、日本語力の実態を把握しやすい
送出機関が推す候補者が必ずしも自社に合うとは限りません。自社の基準で選考し、候補者の来日動機も確認してください。条件面だけで選んだ候補者は、入社後に定着しにくい傾向があります。
Schedule
入社日から逆算したスケジュール
全体で4〜6か月以上が目安。入社希望日から逆算して動き出すタイミングを決めます。
-
入社希望日の5〜6か月前
- 社内決定(採用人数、分野、入社時期)
- パートナー選定(送出機関、紹介会社、登録支援機関、行政書士)
- 候補者選定・面接
-
入社希望日の3〜4か月前
- 雇用契約の締結
- 支援計画の作成
- 在留資格認定証明書の申請書類準備・提出
-
入社希望日の1〜2か月前
- 認定証明書の交付
- 候補者への認定証明書送付(電子交付ならメール転送)
- 査証申請(5営業日〜2週間程度)
- 住居確保、送迎手配、生活準備
-
入社直前〜入社後
- 来日・入国審査(在留カード交付)
- 住居地届出(入国後14日以内)
- 外国人雇用状況届出
- 生活オリエンテーション、入社手続き
実際の期間は国、分野、書類準備状況、審査時期で変わります。社内では「希望日」ではなく「遅れた場合の許容幅」まで含めて決めてください。
Flow
採用から来日までの実務フロー
在留資格認定証明書の申請を中心に、契約から入社後の届出までを順番に進めます。
- 1
雇用契約を締結する
在留資格の申請要件を満たす内容で契約する。給与、業務内容、勤務地などが申請書類と一致する必要がある。契約書は日本語と候補者の母国語の2言語で作成するのが一般的。
- 2
支援計画を作成する
特定技能1号では支援計画の作成・提出が必須。義務的支援10項目を計画に落とす。登録支援機関に委託する場合は、委託契約を結んだ上で計画を作成する。
- 3
在留資格認定証明書を申請する
受入れ企業の職員、または届出済み行政書士が、管轄の地方出入国在留管理局に申請する。オンライン申請も可能。審査期間は1〜3か月が目安。手数料は無料。
- 4
認定証明書を候補者に送付する
電子交付(2023年3月〜)ならメール転送で完了。紙の場合は国際郵便で送付。認定証明書の有効期間は交付日から3か月。この期間内に入国しないと無効になる。
- 5
候補者が査証を申請する
候補者が現地の日本大使館・領事館で査証を申請する。認定証明書(電子版はスマートフォンで提示可能)とパスポートを持参する。所要5営業日〜2週間程度。
- 6
来日・入国審査
入国審査で在留カードが交付される。空港から住居への送迎を手配する。特定技能1号では送迎が義務的支援。
- 7
入社後の届出と生活支援
外国人雇用状況届出(ハローワークへ、翌月末日が期限)、住居地届出(市区町村へ、入国後14日以内)、生活オリエンテーション、銀行口座・携帯電話の契約支援を進める。
海外採用で重要なのは、申請手続きだけでなく、来日前の生活立ち上げ準備を並行して進めること。認定証明書が交付されてから住居探しを始めると、入社日がずれやすくなります。
Preparation
来日前後の準備
企業が行う実務を、来日前と来日後に分けて整理します。
来日前
住居の確保
社宅の準備、賃貸住居の契約代行、連帯保証人の手配。生活必需品(家具・家電等)の準備も含む。特定技能1号では義務的支援。
事前ガイダンスの実施
労働条件、活動内容、入国手続等の説明。特定技能1号では義務的支援。オンラインで実施可能。
来日日程と送迎の手配
空港到着日を調整し、空港から住居までの送迎を手配する。
入社時必要書類の案内
在留カードのコピー、パスポートのコピー等、入社手続きに必要な書類を事前に案内する。
来日後
住居地の届出
入国後14日以内に市区町村へ届出。本人が行うが同行支援する。
生活オリエンテーション
ごみ出しルール、交通機関、病院、防災情報などの説明。特定技能1号では義務的支援。
銀行口座・携帯電話
銀行口座の開設支援、携帯電話の契約支援を行う。
社会保険・税の手続き
健康保険、年金、税の手続きを進める。
特定技能1号では、上記の多くが義務的支援(全10項目)として法定されています。自社で対応が難しい場合は、登録支援機関に委託できます。来日直後は候補者にとって情報量が多いため、初日、1週目、1か月目で何を行うかを分けて運用してください。
Delays
よくある遅れポイント
海外採用でスケジュールが後ろ倒しになりやすい原因です。
- 社内の採用人数・条件が固まらないまま送出機関に相談する
- 送出機関の選定に時間がかかり、候補者確保が遅れる
- 候補者書類(現地の証明書類等)の回収が遅い
- 支援計画の作成を申請直前まで後回しにする
- 認定証明書の有効期間(3か月)を超過し、再申請が必要になる
- 住居確保を認定証明書の交付後に始めて、来日日程がずれる
- 査証申請の所要期間を考慮していない
FAQ
よくある質問
パートナー選定済み・候補者確保済みの状態から始めても、申請から来日まで最短3〜4か月程度かかります。パートナー選定から始めると4〜6か月以上が目安です。
両方使うケースが多いですが、必須ではありません。送出機関と直接やり取りすることも可能です。紹介会社は候補者の選定とマッチングを補助する役割です。初めての海外採用では、紹介会社を間に入れた方が進めやすくなります。
2023年3月から電子交付が可能になりました。オンライン申請時に受領方法で「メール」を選択すれば、メールで受け取った認定証明書を候補者に転送できます。紙の場合は国際郵便で送付します。
特定技能1号では家族帯同は認められていません。特定技能2号では配偶者・子の帯同が可能です。
特定技能1号では住居確保が義務的支援に含まれるため、来日までに確保する必要があります。認定証明書の申請段階で住居の見込みを示す必要はありませんが、来日日を確定する前に手配を始めてください。
支援体制と制度の詳細を確認する
パートナーの選定と並行して、支援体制の構築と特定技能の制度要件を確認します。