業種別
建設業の外国人採用
建設分野は特定技能16分野のなかで最も上乗せ要件が多い分野です。JAC加入、CCUS登録、月給制、受入計画の認定など、他分野にはない追加手続きがあります。制度選択から現場配置まで、建設業固有の論点を整理します。
Overview
この業種の概況
なぜ建設分野は手続きが重いのか
建設業は慢性的な担い手不足に直面しています。高齢化による離職が進む一方、建設投資は回復基調にあり、人手不足は構造的な問題になっています。2024年4月には時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、1人あたりの労働時間で補う余地も狭まりました。
こうした背景から外国人材の受入れニーズは高く、2024年3月の閣議決定では建設分野の特定技能受入れ見込数が5年間で8万人に設定されています。
一方で、建設業では過去に技能実習生に対する賃金未払いや不法就労の問題が多発しました。これを受けて、国土交通省が分野所管省庁として独自の上乗せ規制を設けています。他の分野では不要な手続き(JAC加入、CCUS登録、月給制、受入計画の国交大臣認定など)が建設分野には課されており、受入企業の事務負担は大きくなります。
Systems
使える制度の比較
建設業で検討される主な制度
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 | 技人国 |
|---|---|---|---|
| 対象業務 | 現場作業(土木・建築・ライフライン設備) | 同左(熟練技能) | 施工管理、設計、営業等のオフィス業務 |
| 在留期間 | 通算5年が上限 | 更新上限なし | 更新上限なし |
| 家族帯同 | 不可 | 可 | 可 |
| 建設上乗せ要件 | あり(JAC・CCUS・月給制等) | あり(同上) | なし |
| 派遣 | 不可(直接雇用のみ) | 不可(直接雇用のみ) | 可(条件あり) |
建設現場で作業に従事させる場合は特定技能が主軸です。施工管理や設計等のオフィス業務であれば技人国が該当しますが、現場作業との兼務はできません。
Requirements
建設分野の上乗せ要件
他分野にはない追加手続き
建設分野では、特定技能の共通要件に加えて以下の上乗せ要件が課されています。すべてを満たさなければ在留資格申請に進むことができません。
建設特定技能受入計画の認定
在留資格の申請に先立ち、国土交通大臣に「建設特定技能受入計画」を申請し、認定を受ける必要があります。認定には通常1か月半~2か月程度かかるため、スケジュールに余裕を持つ必要があります。
主な認定要件: 建設業許可を有すること、JACに加入していること、CCUS事業者登録が完了していること、報酬が月給制であること、同等技能の日本人と同等以上の報酬であること。
JAC(建設技能人材機構)への加入
JACは建設分野の特定技能制度を支える中核機関です。技能評価試験の実施、適正就労の監理、無料の職業紹介を担っています。
受入企業は、JACの正会員団体(建設業者団体)のいずれかに加入するか、賛助会員として直接加入する必要があります。賛助会員の年会費は24万円(入会金なし)です。
受入負担金
JAC年会費とは別に、特定技能外国人1人あたりの受入負担金が発生します。この負担金はJACが行う適正就労監理や試験運営等の原資に充てられます。金額はJACの規程によります。
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
受入企業の事業者登録と、外国人本人の技能者登録の両方が必要です。CCUSは建設技能者の就業履歴を蓄積するシステムで、建設分野の特定技能ではその利用が義務づけられています。
現場入場時にCCUSカードをタッチすることで就業実績が記録されます。この記録は特定技能2号への移行時の実務経験証明にも活用されます。
月給制
建設分野の特定技能外国人の報酬は月給制でなければなりません。日給制・時給制は認められません。建設現場は天候や工期の影響で稼働日数が変動しやすく、そのリスクを労働者に転嫁しないための措置です。安定した報酬を確保することで外国人材の生活基盤を守る趣旨があります。
受入人数枠
特定技能1号の外国人の数は、受入企業の常勤職員の総数を超えてはなりません。たとえば常勤職員が10人の企業は、特定技能1号の外国人を最大10人まで受け入れることができます。他の分野には原則としてこの制限はありません。
FITSによる巡回訪問
一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)が、受入企業と外国人本人の双方に対して定期的な巡回訪問を行います。就労状況、報酬支払い、安全衛生の状況を確認するもので、受入企業は訪問に協力する義務があります。
Categories
対象業務区分
2024年の再編で3区分に統合
建設分野の特定技能は、2024年の制度見直しにより従来の19業務区分が3区分に統合されました。区分統合により、同一区分内であれば幅広い業務に従事できるようになっています。
区分1
土木
型枠施工、コンクリート圧送、トンネル推進工、土工、鉄筋施工、とび、海洋土木工、PC工、鋼橋架設、保温保冷など、土木工事に関連する業務全般
区分2
建築
型枠施工、左官、コンクリート圧送、屋根ふき、土工、鉄筋施工、鉄筋継手、とび、内装仕上げ、表装、吹付ウレタン断熱、建設塗装、ALC取付けなど、建築工事に関連する業務全般
区分3
ライフライン・設備
配管、電気通信、建築板金、保温保冷など、ライフラインの整備や設備工事に関連する業務全般
業務区分の統合前に取得した資格は、対応する新区分に読み替えられます。資材の運搬や片付けなどの付随業務にも従事できます。
Transition
技能実習からの移行
試験免除の条件と手続きの流れ
建設分野では技能実習からの移行が主要な人材確保ルートです。技能実習2号を良好に修了した者は、一定の条件のもとで試験が免除されます。
試験免除の条件
技能実習2号を良好に修了した者は、日本語試験が免除されます。
さらに、従事しようとする業務と技能実習の職種・作業に関連性がある場合は、技能試験も免除されます。
建設分野では、多くの技能実習職種が特定技能の業務区分と対応関係にあります。
主な対応関係(技能実習 → 特定技能)
移行手続きの流れ
JAC加入・CCUS事業者登録の完了
未加入の場合は先に手続きを進める
建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通省)
審査に1か月半~2か月程度
在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)
受入計画の認定後に申請可能
CCUS技能者登録(外国人本人)
在留カードの切替後に登録・更新
他社で技能実習を修了した者を採用する場合も手続きは同様ですが、CCUS技能者IDの引き継ぎを確認してください。
Future
育成就労への備え
2027年施行予定の新制度
育成就労は技能実習制度に代わる新しい在留資格で、2027年4月に施行されます。建設分野も対象分野に含まれる見込みです。3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、人材の確保と育成を両立する制度です。
建設分野にとって大きな変更点は、転籍(本人意思による受入機関の変更)が制度上認められることです。技能実習では原則として転籍が認められていませんでしたが、育成就労では一定の条件のもとで転籍が可能になります。
今から確認しておくべき点
- 建設分野の育成就労における対象業務区分の確定状況
- 監理支援機関(技能実習の監理団体に代わる機関)の認定要件
- 転籍の具体的な要件(就労期間の条件、同一分野内に限定されるか等)
- 現在の技能実習生に適用される経過措置の内容
- 建設分野の上乗せ要件(JAC・CCUS等)が育成就労にも適用されるか
Safety
安全衛生と現場管理
建設現場で特に注意すべきこと
建設業は労働災害の発生率が全産業のなかで高い業種です。外国人労働者に対しては、日本語能力の差を考慮した安全衛生教育と、現場での意思疎通の仕組みが特に重要になります。
法定の安全衛生教育
- 雇入れ時安全衛生教育(全員必須)
- 特別教育(足場の組立て、高所作業車等)
- 職長・安全衛生責任者教育
- 作業手順の周知と危険有害要因の伝達
外国人への配慮事項
- 母国語または理解できる言語での教材提供
- 写真・図解を用いた視覚的な安全標識
- KY活動(危険予知活動)への参加と理解支援
- 緊急時の連絡体制と避難経路の周知
元請企業は下請が雇用する外国人労働者の安全管理にも責任を負います。安全書類への記載や新規入場者教育の実施状況を確認してください。
Cost
採用コストと外部パートナー
建設分野固有の上乗せコストを含む
建設分野の特定技能は、他分野と比べてJAC関連の固定費が上乗せされます。主なコスト項目を整理します。
技能実習からの移行であれば渡航費や送出機関費用は不要ですが、JAC関連コストとCCUS登録料は必ず発生します。
FAQ
よくある質問
自社に合う制度と手続きを確認できます
建設分野の概要を把握したら、制度詳細に加えて分野別要件と採用チェックリストで実務を詰められます。