業種別
飲食料品製造業の外国人採用
飲食料品製造業は特定技能16分野のなかで受入人数が最も多い分野です。対象業務の範囲、技能実習からの移行条件、HACCPに沿った衛生管理教育など、この業種固有の論点を整理します。
Overview
この業種の概況
特定技能16分野で受入人数が最多
飲食料品製造業は特定技能の全16分野のなかで受入人数が最も多い分野です。2024年3月の閣議決定では、今後5年間の受入れ見込数が8万7,200人に設定されています。
背景には食品製造業の慢性的な人手不足があります。製造現場は早朝・深夜のシフト勤務や立ち仕事が中心で、国内の求人充足が難しい状態が続いています。
技能実習から特定技能への移行が多いことも特徴のひとつです。缶詰巻締、水産加工、食肉処理加工、パン製造、惣菜製造などの技能実習を経験した人材が、試験免除で特定技能に移行するルートが定着しています。
Systems
使える制度の比較
飲食料品製造業で検討される主な制度
| 項目 | 特定技能1号 | 技能実習(育成就労) | 技人国 |
|---|---|---|---|
| 対象業務 | 製造・加工ライン業務 | 職種・作業ごとに限定 | 品質管理、生産管理、商品開発等 |
| 在留期間 | 通算5年が上限 | 最長5年(1号+2号+3号) | 更新上限なし |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 可 |
| 試験要件 | 技能試験 + 日本語試験 | 職種による | 学歴・実務経験要件 |
| 派遣 | 不可(直接雇用のみ) | 不可 | 可(条件あり) |
現場の製造ライン業務に従事させる場合は特定技能が主軸です。技人国は品質管理や商品開発など、大学等で学んだ専門知識を活かす業務に限定され、現場のライン作業との兼務はできません。
Scope
対象業務の範囲
何をさせられるか、どの事業所が対象か
飲食料品製造業の特定技能で従事できる業務は「飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生」です。
対象となる事業所(日本標準産業分類)
付随業務について
原料の選別、整理、運搬、清掃、事務作業など、製造に付随する業務にも従事できます。ただし、これらの付随業務のみに専従させることはできません。
酒類製造業は対象外です。ただし、酒類を原料の一部として使用する加工食品の製造は対象となりえます。
スーパーマーケットのバックヤードでの食品加工は、事業所が上記の産業分類に該当する場合に限り対象です。単なる小売店舗は対象外となります。
Transition
技能実習からの移行
試験免除の条件と対応する職種
飲食料品製造業では技能実習からの移行が主要な人材確保ルートです。技能実習2号を良好に修了した者は、一定の条件のもとで試験が免除されます。
試験免除の条件
技能実習2号を良好に修了した者は、日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)が免除されます。
さらに、修了した技能実習の職種・作業が飲食料品製造業の業務と関連性がある場合は、技能試験も免除されます。
技能試験が免除される技能実習の職種・作業
上記以外の技能実習職種を修了した者でも、技能試験に合格すれば特定技能への移行は可能です。
移行手続きの流れ
雇用契約の締結
同等の技能を有する日本人と同等以上の報酬
1号特定技能外国人支援計画の策定
自社支援または登録支援機関への委託
在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁に申請
食品産業特定技能協議会への加入届出
受入れ後4か月以内に農林水産省に届出
他社で技能実習を修了した者を採用することも可能です。前の実習先との契約関係が適正に終了していることを確認してください。
HACCP
衛生管理とHACCP
義務化されたHACCPと外国人教育の接点
食品衛生法の改正により、2021年6月からすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられています。外国人従業員もこの基準のもとで作業します。
特定技能の技能試験(飲食料品製造業技能測定試験)でも、食品安全・品質管理・衛生管理に関する問題が出題されます。特定技能で入ってくる人材はHACCPの基礎知識を一定程度持っていますが、自社のHACCPプランに基づく具体的な手順は入社後に教育する必要があります。
外国人従業員へのHACCP教育で配慮すべき点
多言語マニュアルの整備
- 手洗い手順の母国語または英語での記述
- 温度管理の基準値と測定方法
- 異物混入防止の基本ルール
- 写真・図解を用いた視覚的な表現
現場での実践的な教育
- 実技中心の研修(座学より動作で見せる)
- 温度チェックシートは数値で記入できる形式に
- 清掃チェックリストは記号で記入できる形式に
- 定期的な確認と振り返りの機会
農林水産省がHACCP導入のための手引書を業種別に公開しています。食品製造業向けの手引書は自社の衛生管理計画の策定に参考になります。
Support
受入準備と支援体制
義務的支援と製造現場での留意点
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、義務的支援10項目の実施が求められます。自社で支援体制を構築するか、登録支援機関に委託するかを選択します。
義務的支援10項目
事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保支援、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援(雇用契約の解除時)、定期面談
飲食料品製造業で特に注意すべき点
住居と通勤
食品工場は地方・郊外に立地することが多く、住居確保と通勤手段の確保が実務上の重要ポイントです。公共交通機関がない立地では、社用車の送迎や社宅の提供を検討する必要があります。
シフト制勤務への配慮
早朝・深夜シフトが一般的な製造現場では、定期面談の時間確保や生活支援のタイミングに配慮が必要です。行政手続きの同行が平日日中に限られる点も考慮してください。
日本語教育の設計
日本語教育は3層で考えます。第一に安全衛生用語(「熱い」「切る」「止まれ」など緊急性のある語彙)、第二に業務指示の理解(計量、温度確認、ライン速度の調整など)、第三に日常会話です。
食品産業特定技能協議会
受入企業は、受入れ後4か月以内に農林水産省の食品産業特定技能協議会に加入届出を行う必要があります。協議会は受入状況の把握や情報共有を目的としており、未加入の場合は在留資格の更新に影響します。
Cost
採用コストと外部パートナー
主なコスト項目と外部委託の判断
飲食料品製造業は建設分野のような上乗せ要件がないため、コスト構造は特定技能の標準的なものになります。主なコスト項目を整理します。
登録支援機関への委託 vs 自社支援
委託する場合
事務負担は軽減されるが月額コストが継続的に発生します。体制が整っていない企業や初回受入れの場合は委託が現実的です。
自社で支援する場合
コスト面では有利ですが、支援責任者・支援担当者の選任が必要で、過去2年以内に外国人の生活相談業務の経験があることが要件です。
技能実習からの移行であれば渡航費や送出機関費用が不要になるケースがあり、初期コストを抑えられます。
FAQ
よくある質問
自社に合う制度と手続きを確認できます
飲食料品製造業の概要を把握したら、特定技能の制度詳細や現場人材の採用ガイドで具体的な手順を確認します。