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外国人採用で使える助成金・補助金まとめ
外国人雇用で活用できる助成金・補助金の概要、支給額、要件、申請の流れを整理しました。計画届の事前提出が必要な制度もあるため、採用スケジュールに合わせて早めに確認してください。
最終更新日: 2026-04-02
Overview
外国人雇用に使える主な助成金3選
押さえておきたい3つの助成金制度
外国人を採用するとき、活用できる助成金・補助金は複数あります。なかでも外国人雇用に直接関係する制度として押さえておきたいのは、次の3つです。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用から正社員に転換した場合に最大80万円
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
就労環境の整備に要した費用の最大72万円
トライアル雇用助成金
試行的な雇用に対して月額最大4万円(最長3か月)
いずれも厚生労働省が所管する雇用関係助成金で、雇用保険適用事業所であれば業種を問わず申請できます。この記事では、各助成金の概要・金額・要件・申請先を整理したうえで、申請の流れや在留資格との関係まで解説します。
Comparison
助成金の比較一覧表
3つの助成金を横並びで比較
| 助成金名 | 支給額 | 主な要件 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 1人あたり最大80万円(中小企業) | 有期雇用を正社員に転換し6か月以上継続雇用、賃金3%以上増額 | 管轄の労働局またはハローワーク |
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 上限57万円(生産性要件を満たす場合72万円) | 就労環境整備計画の策定・実施、外国人労働者の離職率が10%以下 | 管轄の労働局 |
| トライアル雇用助成金 | 月額最大4万円 x 最長3か月(計12万円) | ハローワーク紹介による雇入れ、対象者が安定就職を希望する未経験者等 | 管轄のハローワーク |
金額・要件は2026年4月時点の情報です。年度ごとに変更される場合があるため、申請前に厚生労働省の公式情報を確認してください。
Detail 1
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用から正社員転換で最大80万円
概要
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する事業主を支援する制度です。正社員化コースでは、有期雇用契約の労働者を正規雇用(無期雇用正社員)に転換した場合に助成金が支給されます。
外国人労働者も日本人と同じ労働関係法令が適用されるため、この助成金の対象になります。特定技能1号で有期雇用契約を結んでいる外国人を、正社員として無期雇用に転換するケースなどが該当します。
支給額
| 転換パターン | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 有期雇用 → 正規雇用 | 80万円/人 | 60万円/人 |
| 無期雇用 → 正規雇用 | 40万円/人 | 30万円/人 |
有期雇用から正規雇用への転換の場合、2期に分けて支給されます(転換後6か月経過で半額、さらに6か月経過で残りの半額)。
主な要件
- --雇用保険適用事業所であること
- --キャリアアップ計画を事前に作成し、管轄の労働局に提出・認定を受けていること
- --転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までに、会社都合の解雇がないこと
- --転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金と比較して3%以上増額していること
- --転換後の雇用形態が就業規則に規定されていること
申請の流れ
キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局に届け出る(転換前に提出が必要)
計画に基づいて正社員への転換を実施する
転換後6か月間の賃金を支払う
6か月経過後、2か月以内に支給申請書を労働局に提出する
注意点
- --計画届の事前提出が必須。転換後に計画を提出しても助成対象にならない
- --特定技能1号は在留期間に上限(通算5年)があるため、正社員転換後も在留期間の管理が必要
- --特定技能2号へ移行できれば在留期間の上限はなくなる
Detail 2
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人雇用に特化した唯一の助成コース
概要
人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」は、外国人労働者が職場に定着できるよう就労環境の整備を行う事業主を支援する制度です。外国人雇用に特化した助成金コースとしては現時点で唯一のものです。
支給額
| 区分 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 生産性要件を満たす場合 | 支給対象経費の2/3 | 72万円 |
| 生産性要件を満たさない場合 | 支給対象経費の1/2 | 57万円 |
対象となる取り組み
必須の取り組みに加えて選択の取り組みを1つ以上実施する必要があります。
必須の取り組み(両方を実施)
- --雇用労務責任者の選任
- --就業規則等の社内規程の多言語化
選択の取り組み(1つ以上を実施)
- --苦情・相談体制の整備
- --一時帰国のための休暇制度の導入
- --社内マニュアル・標識類の多言語化
- --日本語教育の実施
- --その他、外国人労働者の就労環境整備に関する措置
主な要件
- --雇用保険適用事業所であること
- --外国人労働者を雇用していること
- --就労環境整備計画を作成し、管轄の労働局に提出・認定を受けていること
- --計画期間終了後1年間の外国人労働者の離職率が10%以下であること
- --就労環境整備に係る費用を事業主が負担していること
申請の流れ
就労環境整備計画を策定し、管轄の労働局に提出する
計画認定後、計画期間内(1年以内)に就労環境整備の取り組みを実施する
計画期間終了後、支給申請期間内に支給申請書を労働局に提出する
注意点
- --多言語化や日本語教育など、外国人受入れに必要な投資を助成金でカバーできる
- --離職率要件があるため、定着施策とセットで計画する必要がある
- --社労士や行政書士に申請を依頼する場合、そのコンサルティング費用も対象経費に含められる場合がある
Detail 3
トライアル雇用助成金
ハローワーク紹介による試行雇用で最大12万円
概要
トライアル雇用助成金は、就職が困難な求職者を試行的に雇い入れる事業主を支援する制度です。外国人に限定された助成金ではありませんが、安定的な就職が困難な外国人をハローワーク紹介で雇い入れる場合に対象となります。
支給額
| 区分 | 月額 | 最長期間 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般 | 最大4万円 | 3か月 | 最大12万円/人 |
| 母子家庭の母・父子家庭の父 | 最大5万円 | 3か月 | 最大15万円/人 |
主な要件
- --ハローワークの紹介により、対象者をトライアル雇用(原則3か月)として雇い入れること
- -- 対象者が以下のいずれかに該当すること: 就労経験のない職業に就くことを希望する者 / 過去2年以内に2回以上の離転職がある者 / 離職期間が1年を超えている者 / その他、安定した職業に就くことが困難な者
- --トライアル雇用開始日の前日から過去3年間に、同一の者をトライアル雇用したことがないこと
申請の流れ
ハローワークにトライアル雇用求人を提出する
ハローワークの紹介で対象者を雇い入れる
トライアル雇用開始日から2週間以内に、実施計画書をハローワークに提出する
トライアル雇用期間(3か月)終了後、2か月以内に支給申請書を提出する
注意点
- --ハローワーク紹介が必須条件。自社で直接採用した場合や民間人材紹介会社経由の場合は対象外
- --トライアル雇用期間終了後に常用雇用(無期雇用)に移行することが前提
- --外国人の場合、在留資格がトライアル雇用の業務内容に適合していることが必要
Requirements
助成金を受けるための共通の前提条件
どの助成金にも共通する受給要件
厚生労働省の雇用関係助成金には、個別の要件とは別に共通の前提条件があります。以下をすべて満たしていない場合、どの助成金も受給できません。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険 | 雇用保険適用事業所であること |
| 労働保険料 | 前年度より前の保険年度の労働保険料を滞納していないこと |
| 法令遵守 | 過去1年間に労働関係法令違反による送検処分を受けていないこと |
| 不正受給歴 | 過去に不正受給を行い、不支給決定日から5年を経過していないこと |
| 事業継続 | 支給申請日または支給決定日の時点で倒産していないこと |
| 解雇 | 過去1年間に対象労働者の雇用と直接関連する事業主都合の解雇を行っていないこと |
Process
申請の流れと注意点
申請の基本フローと実務上の注意点
申請の基本フロー
雇用関係助成金の申請は、おおむね以下の流れです。
計画の策定・届出(キャリアアップ助成金、人材確保等支援助成金の場合)
対象となる取り組みの実施(正社員転換、就労環境整備、トライアル雇用等)
一定期間の経過(賃金支払い実績が必要)
支給申請書の作成・提出(管轄の労働局またはハローワーク)
審査・支給決定
実務上の注意点
計画届は取り組みの実施前に提出する
後から計画を提出しても対象にならない
申請期限を1日でも過ぎると不支給になる
期限管理を徹底する
支給までに3〜6か月程度かかる
資金繰りへの即効性はない
助成金は「後払い」が原則
取り組みに必要な費用は先に自社で負担する
虚偽の申請は不正受給として全額返還+延滞金の対象になる
事業所名が公表される
申請書類が煩雑なため、社会保険労務士に依頼するケースが多い
社労士報酬は助成金額の10〜20%程度が相場
Compliance
助成金と在留資格の関係
適法な就労が大前提
適法な就労が前提
- --在留資格が就労可能なものであり、業務内容と在留資格が合致していること
- --資格外活動許可の範囲を超えた就労(留学生の週28時間超えなど)がないこと
不法就労があった場合のリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 不支給 | 不法就労に該当する外国人を対象に申請した場合、助成金は支給されない |
| 不正受給 | 事実を知りながら申請した場合、全額返還+延滞金を求められる |
| 助成金の受給停止 | 不正受給があった事業所は、以後5年間すべての雇用関係助成金が受給不可 |
| 刑事罰 | 不法就労助長罪(入管法第73条の2)として3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
実務上の対策
在留カードの確認
採用時に在留カードの確認を徹底する(在留資格、在留期間、就労制限の有無)
オンライン照会
在留カード番号の有効性を出入国在留管理庁のオンラインシステムで照会する
期限管理
在留期限を管理台帳で一元管理し、期限切れが発生しない体制を整える
Local
自治体独自の補助金制度
地域ごとに異なる独自の支援制度
自治体補助金の例
厚生労働省の助成金とは別に、都道府県や市区町村が独自の補助金・助成制度を設けている場合があります。
- --外国人材受入れに係る住居確保費用の補助
- --日本語教育・研修費用の補助
- --外国人材紹介手数料の一部助成
- --多言語対応ツール導入費用の補助
地域や年度によって内容が大きく異なり、予算上限に達し次第終了するものも多いため、網羅的なリスト化は困難です。
調べ方
自治体ホームページ
事業所所在地の都道府県や市区町村のホームページで「外国人 雇用 補助金」等のキーワードで検索する
担当課への問い合わせ
自治体の産業振興課・雇用対策課に直接問い合わせる
JETRO
JETRO(日本貿易振興機構)の外国人材活用に関するページを参照する
商工会議所
商工会議所や中小企業支援センターに相談する
Summary
まとめ
外国人採用で活用できる主な助成金
| 助成金名 | 最大支給額 | 特徴 |
|---|---|---|
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 80万円/人 | 有期雇用から正社員転換で支給 |
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 72万円 | 外国人雇用に特化した唯一のコース |
| トライアル雇用助成金 | 12万円/人 | ハローワーク紹介による試行雇用で支給 |
いずれも雇用保険適用事業所であれば業種を問わず申請でき、外国人労働者が適法に就労していることが前提です。計画届の事前提出が必要な助成金もあるため、採用スケジュールに合わせて早めに準備を始めてください。
助成金の制度内容や金額は年度ごとに改定されることがあります。申請前に必ず厚生労働省の公式ページで最新情報を確認するか、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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