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外国人労働者の社会保険・労働保険の手続きガイド

外国人労働者であっても、社会保険・労働保険の加入義務は日本人と同じです。加入要件、届出手続き、脱退一時金、社会保障協定まで網羅的に解説します。

社会保険 健康保険・厚生年金
労働保険 雇用保険・労災保険
帰国時 脱退一時金制度
二重加入防止 社会保障協定

最終更新日: 2026-04-02

Conclusion

外国人でも社会保険・労働保険の加入は必須

国籍による加入免除はない

外国人労働者であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)の加入義務は日本人と同じです。国籍による加入免除はありません。

適用事業所に雇用され、加入要件を満たす限り、在留資格の種類にかかわらず被保険者となります。「外国人だから」「短期滞在だから」という理由で加入させないのは法令違反にあたります。

加入要件を満たすにもかかわらず社会保険に未加入の場合、特定技能等の在留資格申請で不許可・不更新となる要因にもなります。

Social Insurance

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件

適用事業所と被保険者の要件

適用事業所と被保険者の要件

社会保険の適用事業所に常時使用される従業員は、国籍を問わず被保険者となります。加入要件は次のとおりです。

雇用形態 加入要件
フルタイム従業員 適用事業所に雇用されていれば原則加入
パート・アルバイト 週の所定労働時間および月の所定労働日数が、フルタイム従業員の4分の3以上であれば加入
短時間労働者
(従業員51人以上の企業)
週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、2か月超の雇用見込み、学生でないこと、の全てを満たせば加入

外国人雇用で特に確認すべきポイント

在留期間が短い場合でも、加入要件を満たせば加入義務がある

在留資格「留学」で資格外活動許可を得てアルバイトする場合、週28時間以内の就労が上限であり、通常は4分の3基準を満たさないため対象外になることが多い。ただし短時間労働者の適用拡大要件に該当する場合は加入対象となりうる

届出時に在留カードのコピーの提出を求められることがある

Labor Insurance

労働保険(雇用保険・労災保険)の加入要件

雇用保険と労災保険の適用範囲

労災保険

労災保険は、雇用形態・国籍・在留資格を問わず、労働者を1人でも雇用していれば事業所に適用されます。パート・アルバイトを含む全ての労働者が対象です。個別の届出は不要で、事業所単位で保険関係が成立します。

不法就労の状態であっても、業務上の災害に対して労災保険の給付は行われます

雇用保険

雇用保険は、以下の要件を満たす労働者が被保険者となります。

要件 1

週の所定労働時間が20時間以上

要件 2

31日以上の雇用見込みがある

ただし、以下に該当する場合は適用除外です。

対象 取扱い
在留資格「留学」の者(昼間学生) 雇用保険の被保険者にならない。ただし卒業見込証明書を有し、卒業後も引き続き雇用される場合は加入対象
在留資格「家族滞在」で資格外活動許可を得て就労する者 週28時間以内が上限。週20時間以上の要件を満たす場合は加入対象となりうる

外国人雇用状況の届出

雇用保険の被保険者となる外国人については、資格取得届に在留カード番号・国籍・在留資格等を記載することで、外国人雇用状況の届出を兼ねます。

雇用保険の被保険者とならない外国人(留学生アルバイト等)については、「外国人雇用状況届出書」を別途ハローワークに届け出る必要があります。

届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となります。

外国人雇用状況届出の詳細は「外国人雇用状況届出とは」をあわせてご確認ください。

By Visa Type

在留資格ごとの注意点

在留資格によって加入対象が異なるケースがある

留学生アルバイト(在留資格「留学」+ 資格外活動許可)

保険 加入要否 備考
社会保険通常は対象外4分の3基準を満たさないことが多い。短時間労働者の適用拡大も「学生でないこと」の要件があるため昼間学生は対象外
雇用保険適用除外昼間学生は対象外
労災保険対象アルバイトでも業務上の災害は補償される

国民健康保険・国民年金には本人が加入しているため、企業側の手続きは不要です。ただし外国人雇用状況届出は必要です。

特定技能(1号・2号)

保険 加入要否 備考
社会保険加入必須在留資格の申請・更新時に加入状況が審査対象。未加入は不許可・不更新の要因になりうる
雇用保険加入必須--
労災保険対象--

特定技能はフルタイム雇用が前提の在留資格です。在留資格申請では健康保険・厚生年金の保険料納付状況確認書類の提出が求められます。

技能実習

保険 加入要否 備考
社会保険加入必須技能実習計画の認定申請時に加入を証明する書類が必要
雇用保険加入必須--
労災保険対象--

実習実施者(受入れ企業)のもとでフルタイムで就労します。監理団体による定期監査で社会保険の加入状況が確認されます。

技術・人文知識・国際業務、その他の就労系在留資格

保険 加入要否 備考
社会保険フルタイムなら加入必須パートタイムの場合は4分の3基準または短時間労働者の適用拡大で判断
雇用保険要件を満たせば加入週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み
労災保険対象--

Lump-sum Withdrawal

脱退一時金制度

帰国する外国人が年金保険料の一部を取り戻せる制度

脱退一時金とは

日本の年金制度に加入していた外国人が、年金の受給資格期間(10年)を満たさずに帰国する場合に、納付した保険料の一部を請求できる制度です。厚生年金と国民年金それぞれに脱退一時金の仕組みがあります。

厚生年金の脱退一時金

請求要件 日本国籍を有しないこと、被保険者期間が6か月以上、日本に住所を有しないこと(帰国後に請求)、年金の受給権を満たしていないこと
支給額 被保険者期間の月数に応じた額(上限60か月分)
請求期限 日本を出国後2年以内
請求先 日本年金機構

国民年金の脱退一時金

請求要件 厚生年金と同様の国籍・住所・受給権の要件に加え、保険料納付済期間が6か月以上
支給額 保険料納付済期間に応じた額(上限60か月分)
請求期限 日本を出国後2年以内

企業としての対応

退職・帰国する外国人従業員に脱退一時金制度の存在を案内する

請求に必要な「年金手帳(基礎年金番号通知書)」や「資格喪失日がわかる書類」を本人に渡す

請求手続きは本人が帰国後に行う(企業が代行するものではない)

Totalization Agreements

社会保障協定がある国の取扱い

年金の二重加入防止と期間通算の仕組み

社会保障協定の目的

日本と社会保障協定を締結している国との間では、年金制度への二重加入を防止し、年金加入期間を通算できる仕組みがあります。

協定の適用がある場合

ケース 取扱い
相手国から日本への派遣(原則5年以内) 相手国の年金制度に加入し続け、日本の厚生年金への加入が免除される。相手国の「適用証明書」を日本年金機構に提出
日本から相手国への派遣 日本の厚生年金に加入し続け、相手国の制度への加入が免除される

協定締結国(2025年4月時点で発効済み)

ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン、イタリア

署名済み・未発効の国を含め、最新の状況は日本年金機構のウェブサイトで確認してください。

企業としての確認事項

外国人従業員の国籍が協定締結国かどうかを確認する

協定国からの派遣者には「適用証明書」の提出を求める

適用証明書がない場合は、原則どおり日本の社会保険に加入させる

健康保険は協定の対象外となる国が多い(国ごとに協定の対象範囲が異なる)

Misconceptions

よくある誤解と正しい対応

実務で起こりがちな誤解を正す

在留期間が短いから社会保険に加入しなくてよい

在留期間の長短は加入要件に含まれない。要件を満たす限り、在留期間が1年でも3か月でも加入義務がある。

帰国するから厚生年金に入れても意味がない

帰国後に脱退一時金を請求できる。社会保障協定による期間通算が適用される国もある。特定技能等では社会保険の加入状況が在留資格の審査で確認される。

留学生のアルバイトは社会保険も雇用保険も不要

雇用保険は昼間学生なら適用除外だが、労災保険は適用される。社会保険は労働時間の基準で判断する。外国人雇用状況届出は雇用保険の対象外でも必要。

不法就労の外国人には労災保険は適用されない

労災保険は在留資格の有無にかかわらず適用される。ただし不法就労自体は入管法違反であり、企業には不法就労助長罪のリスクがある。

外国人だから日本の年金は免除される

国籍による年金の免除制度はない。協定に基づく免除は、協定締結国からの一時的な派遣者で適用証明書がある場合に限られる。

Procedures

届出の手続きと必要書類

社会保険・雇用保険・労災保険の届出をまとめて確認

社会保険の届出

届出 届出先 期限 必要書類
健康保険・厚生年金の資格取得届 管轄の年金事務所(または健康保険組合) 雇用開始日から5日以内 資格取得届、在留カードのコピー(ローマ字氏名の確認用)
被扶養者(異動)届 同上 扶養の事実発生から5日以内 被扶養者届、続柄確認書類、収入確認書類
資格喪失届 同上 退職日の翌日から5日以内 資格喪失届、健康保険証の回収

外国人特有の注意点として、届出の際にローマ字の氏名を在留カードの表記と一致させて正確に記入する必要があります。基礎年金番号がない場合はマイナンバーで届け出ます。

雇用保険の届出

届出 届出先 期限 必要書類
雇用保険の資格取得届 管轄のハローワーク 雇用開始日の属する月の翌月10日まで 資格取得届(在留カード番号・国籍・在留資格を記載)
資格喪失届 同上 離職日の翌日から10日以内 資格喪失届、離職証明書
外国人雇用状況届出書
(雇用保険の対象外の場合)
同上 雇入れ・離職の翌月末日まで 届出書、在留カードの確認

労災保険

個別の届出は不要(事業所単位で保険関係が成立)

労働保険の年度更新(概算保険料・確定保険料の申告)で対応

労災事故が発生した場合は「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出

Summary

まとめ

押さえるべきポイント

外国人労働者の社会保険・労働保険の手続きは、原則として日本人と同じ基準で判断します。国籍による免除はなく、加入要件を満たせば届出が必要です。

社会保険・労働保険の加入要件は日本人と同じ。国籍や在留期間は要件に含まれない

留学生アルバイトは雇用保険の適用除外だが、労災保険は適用される。外国人雇用状況届出は必須

特定技能・技能実習では社会保険の加入状況が在留資格の審査で確認される

帰国する外国人には脱退一時金制度がある

社会保障協定の締結国からの派遣者は、適用証明書により年金の二重加入を回避できる

届出の際はローマ字氏名の正確な記入と在留カード番号の記載が必要

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